お題53『動物』

 ※『音系シリーズ 箏曲さんが行く!』のキャラたちがたくさん出てきますが、これは本編と全く関係の無いちょっとしたファンタジー入り話です。



 私の名前は千鳥瑛子。某中堅私立大学に通う女子大生。趣味はお箏で箏曲研究会に所属している2年生。

 でも、箏曲でのいろんなことは面倒だし、いっそ抜け出したくもなる。ああ、箏曲から離れて、私の大好きな人と暮らせるとかそんな夢みたいなことがあったらなんて無意味な妄想をしてみたり。

 そんなある朝私にとんでも無いことが起こった。

『箏曲さんって、男っぽい女っぽいというより動物っぽいよね』

 たしかにそう言われていたことはあった。1度や2度ならず何度もいろんな動物、仔猫だの仔犬だの(何で仔がつくんだ!)言われた。



――なんじゃこりゃーっ!!



 鏡の前に映っているのは三頭身ぐらいの私。

 いや、これはちょうど3歳ぐらいの自分の姿に近い。

 昔の自分は日本人形がそのまま動いてるようだとよく言われた。あまりこの見た目は好きではない。自分で言うのも何だが、本当に人形みたいなのだ。

 ちょうど赤い和服着ててもうばっちし変な人形。

 しかも追い討ちをかけるように何かの動物らしき耳と尻尾もある。

――終わった、私。千鳥瑛子、20歳、さようなら

 今までの20年間がんばってきたことはなんだったのだろう。こんな姿じゃ外にも出れない。

 ん? 外?

 私は辺りを見回した。

 今更だが、ここはどこだ? 私の部屋じゃない。

「お嬢ー、起きたー?」

「うにゅ?」

 ドアが開き、声のした方を私は見上げた。

「おはよ。朝ごはん食べよっか」

 げ。何故に綾瀬さん!?

 私は箏曲の音系議員、この人は管弦の音系議員。

 仲間同士ではあるがそれ以上でもそれ以下でも無い。私の家に綾瀬さんが来ることもあり得ないし逆もそうだ。

 たしかに私は綾瀬さんが大好きだけど……。

「どうしたの? お嬢? 具合悪いの?」

 綾瀬さんは屈んで、心配そうに私の顔を覗きこんだ。

 小柄で細身だけど顔立ちは年齢相応で大人の顔つきなのでこういう姿勢で目を合わされるとひどく大人の男という印象を受ける。

 というか本来私より背の低い綾瀬さんに見下ろされるのすっごく屈辱的なんだけど。

「うみゅー!」

 あれ? 私、しゃべれないのか? 頼むからこの鳴き声も何とかしてくれ。いっそもう消えたい。私は音系ではおこちゃまキャラだったかもしれないけどこんなの嫌だ。

「ん? もう、お嬢は本当に甘えるの下手なんだから。抱っこして欲しいんだね」

 綾瀬さんは笑顔でそう言うと私を抱き上げた。またもや屈辱。絶対私のほうが体重10キロは重いはずなのに!

「うみゅ……」

 綾瀬さんの腕の中ってあったかいなぁ……。

 そう思ううちに心の中は安らかになっていく。

 私の朝ごはんはミルクと、ドッグフードかキャットフードか何か。

 食事をする私を見る綾瀬さんも終始優しい笑顔で。私はなんかくすぐったい。

 どうやらここ綾瀬さんの家らしい。淡々と料理する時も道具を手際よく出すし。物が少なくて一人暮らしっぽい感じ。

 窓から差し込む光と素っ気無いような木目がそのままむき出しになった家具たちが逆に爽やかに感じた。

「お嬢、今日バイトなんだ」

「みゅ」

「真美に預かってもらおうかとも思ってたんだけど、お嬢真美にそんなに懐いてないからストレスかな? 真美は動物好きだから快諾してくれるだろうけど……」

 真美って誰? あれ? どっかで聞いたことある名前のような気もするんだけど、どこだっけ。

 というか、私はやっぱり動物なのか。というかなんだ? 私と綾瀬さんは音系議員同士ではないのか? これは、私は何かの動物で綾瀬さんのペットってことか?

「そうだ。浅井さんに頼んでみよう。お嬢、浅井さんにすごく懐いてるよね」

 浅井さん。グルービーの音系議員。私の尊敬し憧れる、いつかああなりたいっていう先輩だ。

「あー、やっぱ浅井さんがいいんだ。そんなに尻尾振って。僕より好き?」

 私は首を横にぶんぶんと振った。浅井さんは大好きだけど、やっぱり綾瀬さんが一番好きだ。

「そっか良かった。じゃあちょっと電話してくるね」




 私は、綾瀬さんにまた抱っこされて電車に乗った。

 これは……埼玉キャンパスに行く道だな。

 この世界では私という動物は普通だったのか? 特に奇妙な目で見てくる人はいない。




 見慣れた建物。埼玉キャンパスのサークルの部室もとい文化系にとっては活動場所でもあるコミュニティーセンターにやってきた。

「あ、浅井さん!」

 綾瀬さんが呼びかけるとトレードマークの白いシャツを羽織った黒髪色白の青年が振り返る。この真面目そうな顔立ちに優しい穏やかな笑顔を浮かべてるのが浅井さんだ。

「綾瀬くん、おはよう。“お嬢”ちゃんを預かればいいんだよね」

 さっきから思ってたんですが私の名前は“お嬢”ですか。そのネーミングセンス何とかせいやコラ綾瀬。

「うん。今日夜遅くなりそうで、お嬢ストレスためると吐いちゃったりして心配だから……もしかしたら浅井さんとこに泊めてもらうかもしれないけど」

「いいよ。僕も動物好きだし」

 私は綾瀬さんの腕から浅井さんの腕に引き取られる。浅井さんの腕は綾瀬さんと同じくらい細いけどこの人色が白いせいで本当に女の人みたいと時々思ってしまう(ちなみに綾瀬さんは色が黒い方だ)。

「じゃあ行ってきます。お嬢、良い子でね」

 綾瀬さんが私の頭を一撫でして、バイト先へと向かった。




 コミセンの1階ではグルービーの人たちが練習をしていた。今日は個人練なのかな、と思いながら私はぺたと床に座った状態で見ていた。

 あ、おトイレ行きたい……けど、浅井さんさっき何か女の子に頼まれて用事済ませに行っちゃったし。

 きっとこの姿で階段上るのは無理だ。恐すぎる。

 どうせ今は動物の私。外でしちゃえ、と思い、開け放たれてるドアから外に出た。

 草むらに隠れて、とりあえず用終了。

「みゅ?」

 私の前に大きな黒猫が登場。いや、私が今小さいからそう見えるだけで普通の猫なんだろう。

 猫は私をじっと見てる。そういえば私は動物に懐かれやすい。その影響かな?

 猫はじりじりと私のところに寄ってきた。綺麗な猫だった。私は頭を撫でようと手を伸ばした。そう、今までの私ならそうしたからとごく自然に。

「にゃっ!?」

 次の瞬間、私は猫に突き飛ばされた。いや、のしかかられている。

 怒らせちゃったのか? いや、待て、私は今もしかして動物動物って、猫なのか?

 で、もしこの猫がオスだとしたら……ヤバイ。私は今ヤバイ状態だ。

 猫は案の定私の服を乱暴にもずらそうと手を動かしだした。猫がこんなに怖いとは……。

「みゅーっ! みゅーみゅーっ!!」

 できる限りの絶叫。誰か助けて! 綾瀬さん! 浅井さん! 議長さん、若様、百合谷さん、実波さん、美奈ちゃん……

 涙が出てくる。いまだかつて味わったことの無い恐怖。

「ふぎゃーっ!」

 びっくりして目を開けると、黒猫はどっかに行ってしまった。

 状況がわからずあたりをキョロキョロする。

「大丈夫?」

 声をかけてきたのは……。

 意外、というか。ギターの音系議員の越谷さん。絶対こっしーさんと呼ばれてると思しき人。

 眼鏡姿に茶色の長くも短くも無い髪。中肉中背で影が薄いと言われがちなお方だ。ギターは上手い。え、ごめんフォローになってない系?

 私が大穴の登場にきょとんとしていると、こっしーさんも首を傾げた。

 すると、どこかへすたすたと行ってしまった。

 待ってよ、私今恐くて歩けないんだから、少しは一緒にいてくれたっていいじゃないか、ジョイントまでいっしょにやったのに薄情者ー!

 と思っていると、こっしーさんが戻ってきた。

 手を私に差し出す。その上には、おつまみとして売ってるマグロを乾かしたサイコロ型の小さいおやつというか食物がのっていた。

「なんか泣いてたみたいだから、これ、あげる。猫はやっぱり魚でしょ?」

 ああ、コンビニで買ってきてくれたのか。普段よく知らないけど優しいじゃない、こっしーさん。

「猫のお嬢ちゃーん! どこー?」

 ……そのネームなんとかしてくれ。

 とりあえず、ホッとした。浅井さんの声だ。

「グルービーさん、猫ならここにいる」

「お嬢ちゃん!」

「みゅー!」

 私は思わず両手を浅井さんの方に伸ばした。私は綾瀬さん、浅井さん、百合谷さんがそばに来るとすごく安心するらしい。綾瀬さんが一番やっぱり安心するけど、浅井さんの癒しの力は絶大だ。今までの恐怖感から解放されたように涙が溢れ出す。

「どうしたの? お嬢ちゃん」

 浅井さんは私を抱き上げ、なだめるように身体を撫でて落ち着かせようとしていた。

「さっき野良猫らしき猫に襲われそうになってた。恐かったんだと思う」

「そうなんですか? ごめんね、お嬢ちゃん、目はなしたりして」

 浅井さんがぎゅーっと抱きしめてくれる。あったかくてすごく安心する。

「グルービーさんの猫?」

「ううん、この子は綾瀬くんの猫だよ」

「ああ、前話してた。管弦さんが溺愛してるペットね」

 綾瀬さんが私を溺愛? 嬉しい通り越してなんか怖い。

「ああ、そうだ、グルービーさん、この間言ってた資料なんだけど、うちのBOXにあるからちょっと来てもらえる?」

「うん、いいよ」

 浅井さんに抱きかかえられたまま、2人と私――1匹なのかな――はコミセンの3階に移動した。

 箏曲のBOX、部室の前を通る。しかし、異変が……。

「ここって空きだったっけ?」

「ああ、そこ箏曲研究会の部室でしょ? 今年廃部まではいってないけど事実上活動不能みたいなサークルになったらしいよ」

 私はこっしーさんを思わず凝視した。

「前から活発なサークルではなかったみたいなんだけど、なんかバラバラなんだって。今年は入部生入らなかったし、去年も10人ぐらい入ったのに誰も面倒見ないし1年の中で組織だったものができるわけでもないし、どんどんやめてっちゃって。うちも去年ジョイントギリギリだったし」

「そういえば、今年5月ごろ音系から抜けたもんね……全然話したことないから気にかけなかったけど」

 そうか。私は猫なのだ。この世に『箏曲研究会音系議員、千鳥瑛子』は存在していない。私が入部してない……それがこんな状態にまでしてしまうのか。でも、そういわれればそうか。私は、あまりにも活動が停止してるサークルのような箏曲が心配で勝手に同学年の子集めて練習日つくって活動し始めて、先輩とも話をするよう人見知りを抑えて頑張ったつもり。あのまま私が何もしないと……あの子がやめて、あの子もやめて、空虚だからあの子は入部しなくて……。ああ、終焉が見えるかも。

 私は、とても寂しかった。なんでか知らないけど。




 私は、今日臨時で音系会議が開かれることになって、浅井さんに会議にも連れて行かれることになった。丁度その時に綾瀬さんのところに戻るらしい。

 音系会議にはいつものメンバー。でも、私はいない。箏曲はここには存在しない。

 違和感があった。グループが微妙に小さくなっている。

 美奈ちゃんは議長さんとしか喋らない。マジシャンさんはフリーウェイの子とだけ喋ってる。若様は百合谷さんとだけ、男子の方はかたまってはいるものの女子とあまり話さない。

「あ、浅井さん、ありがとう」

 綾瀬さんが教室に入り、私を引き取ると、後ろのほうの席にぽつんと座った。

 何でだろう、この虚無感。大好きな音系なのに、寂しい。

「浅井さんから聞いたよ。お嬢恐かったでしょう? でも大丈夫、今日は僕いっしょにいるからね」

 綾瀬さんのぬくもりすら、安心感を遠のけてしまう気がした。




 綾瀬さんと2人――わかってるよ! どうせ1人と1匹だ――で綾瀬さんの家に帰る。

「疲れたー。今日はいっしょに寝ようね」

「みゅー」

 お風呂はいいのかー! とツッコミを入れつつ、そのまま無抵抗で横になる。横にされたというか。

 やっぱりあったかい。それに何だかいい匂い。

「お嬢、今幸せ?」

 急に綾瀬さんが質問してくる。

「お嬢は僕の飼い猫。僕はお嬢をすっごく可愛がってる。いつもいっしょだよ」

 綾瀬さんが私をぎゅっと抱きしめる。ほだされそうにもなったけど、違う、何かが違う。

 綾瀬さんとはいっしょにいたい。でも、今日浅井さんとこっしーさんと箏曲の部室前を通った時のこと、音系でのあの虚無感がとてつもなく寂しいのだ。

「箏曲さんはいない。僕は箏曲さんを知らない」

 綾瀬さんをじっと見る。とても不思議な気分。箏曲さん……そうだ、元の私。

 綾瀬さんとこんな風には決して過ごすことは無いはずの人物。でも、その箏曲さんがいないおかげであのサークルは形を変えてしまい、音系も姿が少し違う。

「あのね、箏曲は箏曲さんがいて、あの箏曲だったんだよ」

「みゅ……」

「それで、音系も。お嬢は若様や百合谷さんと仲が良い。僕とも仲が良い。浅井さんとも仲が良い。他のサークルの議員とも。議長にも進んで仕事をするから信頼されてて錦川とも気兼ねせずしゃべれる人が箏曲さん。錦川は例外だけど1コ下で、後輩として、それもこんな後輩がいたらいいなってみんなが可愛がってた。それで、話しやすかったんだね、みんな。僕も含めて」

 綾瀬さんが優しいながらも真剣な目で私の目をまっすぐ見た。

「お嬢、どうする? 僕の飼い猫になる? それとも箏曲さんに戻る?」

「え? なに?」

 私の口からは言葉が出た。

「お嬢、もし今日の生活が良かったなら飼い猫を選べばいいよ。別に今までの記憶をよこせとは言わない。僕とこんな風に過ごしたいって思えば。僕はお嬢がいっしょにいたいって思う限りいっしょにいるよ。ただし僕は飼い主で君は飼い猫だ。それ以上でも以下でも無い」

「私は昔のことは覚えていられるんですか? 綾瀬さんをこう好きだって気持ちも?」

「うん。でも、もう戻れない」

「…………」

「前に戻りたいならまた箏曲研究会の千鳥瑛子になればいい。僕とは音系議員同士の付き合いになる。今までどおり。今日みたいには過ごさない。僕には彼女がいるから、他の女の子とこんな風に過ごせるはずもないからね」

「……綾瀬さんとこうやって過ごせるのは幸せです」

 綾瀬さんが毎日私に笑いかけてくれて、抱きしめてくれるのなら、いつ死んでもいいとさえ思えるかもしれない。

「でも、やっぱ私は私が良いな。綾瀬さんと音系議員同士の仕事したいし、箏弾きたい。浅井さんともお話したいし、若様や百合谷さんとふざけあいたい。議長さんから雑用引き受けて少しは役にたちたいし、今後の美奈ちゃんのお手伝いもしたい。箏曲のことほっとけないし……」

 私がそう言うと、綾瀬さんは優しく微笑んだ。

「うん、わかった。明日目が覚めたら元に戻るよ。今日はもう少し猫だね」

「あ、綾瀬さん」

「ん?」

 私は恥ずかしくて、綾瀬さんの耳元でごにょごにょ言う。

「抱っこしててほしいぐらい普通に言えばいいじゃない」

「嫌だ! 恥ずかしいもん!」

 私がムキになったようにそう言うと、綾瀬さんは苦笑しながら私を優しく抱っこしてくれた。

「じゃあ、今日はおやすみ。明日から、またよろしくね“箏曲さん”」

「おやすみなさい。綾瀬さん」

 私は綾瀬さんの腕の中で丸くなって本当に猫のようにして目を閉じた。

「でも、お嬢。もう少し素直に人に甘えていいんじゃないかな? べつに猫でも動物じゃなくて、人間でもさ」




 私は携帯電話のアラームで起きると、いつも通り髪を梳かして、バレッタで留める。洗面所で顔や歯を洗い、出かける。

 自分の家から。

「じゃあ今日音系だから遅くなる!」

 私は箏曲研究会の千鳥瑛子、大学2年生。




「じゃあ音系終了!」

「お疲れ様でしたー!」

 みんなが席を立つ。ロックさんとマスターさんが美奈ちゃんに何か言って、あ、怒られてる。マジシャンさんと若様が何か相談してる。

「瑛子ちゃん、書類お願いね」

 スタイル抜群の美人、議長さんが私にそう声をかける。私は笑顔で頷いた。

「箏曲さん」

 綾瀬さんが声をかけてきた。私はいつもどおり微笑んで返す。

「ごめん、規約のところ見せて」

「いいですよ」

 規約のメモをノートに写す綾瀬さんを見守る。これが写し終えたら、綾瀬さんは今日は帰っちゃうな……。

「ありがとう」

「あ……」

 綾瀬さんの袖を掴んでる自分。

「ん?」

「あ、の。あの、カノンの譜面今なおしてるんですけど、読めない部分があって、教えてくれますか?」

 綾瀬さんがきょとんとした顔で私を見ている。私は気まずくて肩をすぼめるが、綾瀬さんが優しい笑顔になる。

「いいよ。どこ?」

「えっと……」

 ふと夢を思い出す。変な夢だった。綾瀬さんの飼い猫になるなんて。

 でも、なんかそのおかげですんなり人に甘えられる気がした。




「えーちゃんって抵抗しないの?」

「え?」

 私の身体をやんわりと離して、他大学の友人である尺八奏者の男の子が言った。

「ああ、セクハラは受けるの苦手だけど」

 今、尺八奏者の友人が2人それぞれ交代で抱きついてきた。正直こんなに人がいるところで抱きつくなよとも思ったが、私はとくに抵抗することも無く抱きつかせていた。しかもその2人ときたら(特に後者)前の箏の友達と違って結構ちゃんと腕に力入れるという荒業(?)をやってのけた。酒臭いのがわかるよ、おかげで。

「なんか、抱きつかれるのはあんまり抵抗無いみたい」

 あの日、動物になった夢。私は大好きな人と尊敬する先輩に抱っこされていた。それはあったかくて心地が良くて。

 夢なのにすごくあったかかった。

「私、女じゃなくて動物っぽいから」

 私は2人には聞こえないようにボソリと言った。




 箏曲の千鳥瑛子と飼い猫のお嬢の不思議なお話……。



 


〜あとがき〜
 正直謎な話です。
 ちょっと遊んでみたかったのとパラレル話を書いてみたかったのです。
 かなり遊び色が強いので合同企画のお題で書きました。
 実際の私とも全く関係無いですよ。たしかに、一番最後の抱きつかれのところはノンフィクションですけど(ちなみに抱きついてきたのは私立S大の尺八奏者と国立C大の尺八奏者です。もちろん以前腕を回してきた箏の友人は私立G大のセクハラ大魔王さんです/笑) 学三の皆さんは音系と違ってセクハラが無礼講です(笑)
 不思議なんですけど、私異性の方に抱きつかれても本当に無抵抗なんですよね。嫌いな人だと抵抗するのかもしれないんですけど、基本的に……。それをマジで管弦さんに「危ないから! 変な男に捕まっちゃだめだよ!」って心配され注意受けましたが、なおってません。ごめんなさい管弦さん(汗)
 あと千鳥瑛子は私の分身なので、本当なら猫より犬にした方がいいんですけど(私は仔犬らしいので←マメ柴らしいよ/泣)なんとなく猫にしました。
 話の中では変さを残すためにちっちゃい人間にネコミミと尻尾があるという姿になってますが普通の猫扱いになってます。でも、おそらく飼い猫を選べば完璧に猫になってたのかもしれませんね。
 箏曲から逃げ出して、大好きな綾瀬さんと暮らせたらいいのにという瑛子の妄想を神様が叶えてくれてというコンセプトです。でも、結局元の自分を選んだのでした。
 私だったらどうするかな……今の自分がいいけど、日によっては猫がいいと言ってしまう時もあるかもしれませんね。

 瑛子がいない場合というのは大層めな表現でしたけど、ある人が実際いなくなったらガラリと変わる場合だってありますよね。実際、この浅井さんのモデルの方が会議に欠席してた時はぎすぎすした空気になることもあったという感じで。

 今回はそんなにメッセージ性は強くなかったですが、こういうちょっと変なノリのお話が書けて楽しかったです♪