お題100「いつの日かきっと」 私の想いを具現化したお話です♪
いつの日かきっと・・・・・・その言葉だけが私の今の希望で・・・・・・
朝の日差しが窓から差し込む。爽やか〜な朝日に思わず微笑んで私は起きた。これから魔法の特訓しなきゃ! 早く一人前の魔法使いになりたいし!!
私はササッと着替えを済ませて、顔を洗って、簡単に身支度を整えて愛用のほうきを持って外に出た。小さな森にある広場のような場所、そこが私の魔法の特訓所。魔法の訓練は気力も体力も使うからすごく疲れるんだけど、私は大好き。だから思わず駆け出す。
「師範――――――――!!」
私より背の高い黒髪に黒い服を纏った人物に声をかける。若いけど私の魔法の師範なんだ! すっごく強いんだよ〜、でもって普段はすっごく優しくて大好きなんだ!
「牡丹さん、おはようございます」
師範はいつもどおり穏やかな笑顔を返してくれた・・・・・・けど、どこかその笑顔はいつもと違うように思えた。
「師範?」
「さ、特訓をはじめましょうか」
違和感を感じつつも朝の特訓をはじめる。炎や雷の魔法はさすがに失敗すると森だし、大惨事になってしまうので氷や水、光の魔法なんかを練習する。
「凍てつく冷気よ!! 狙いし標的を凍らせよ!! 『吹雪の舞』!!」
私がほうきを掲げて呪文を唱えると、的にしたサランラップの芯が凍りついた。3度目でなんとか上手くいった・・・・・・私にしては上出来だ。
「今日はなんとかできましたね」
「はい!! 師範の指導のおかげです!!」
私は嬉しくて満面の笑みでそう答えた・・・・・・師範はやっぱりどこかいつもと違うように見えた。
「もう、牡丹さんは私が見るまでもないでしょう」
師範が声のトーンを落としてそう言う。謙遜かなぁ・・・・・・。
「何言ってるんですか! 私は師範の弟子じゃないですか♪」
師範は何も返さなかった。いつもなら“そうですね、なので師範命令は絶対ですよねw”とか言ってくれるのに・・・・・・。
「牡丹さん、私は旅に出なければならないんです」
しばらくの沈黙の後、師範がそう言った。鳥たちが飛ぶ音が背後でする。木々がざわめいている。いつもの光景のはずなのに私は時間が止まったように呆然とした。
「旅って・・・・・・またお引越し??」
ちょっと前に私と師範は軽くお引越しをした。この森をはさんで、前は田舎の村にいたんだけど、今回はちょっと街の近くに住もうということで・・・・・・。
「いえ、そうではありません・・・・・・牡丹さん、牡丹さんのことは街の人たちに頼んでおきました。幸いこの街の人たちはとても親切です。騎士にとても気さくで面白い方がいらっしゃいましたし・・・・・・そうそう、義賊の女の子なんか牡丹さんと仲良くなれそうな子が・・・・・・」
「師範は行っちゃうんですか??」
私の声は必死さのせいか上ずっていた。
「はい」
「私はこの街に・・・・・・??」
「ええ、そうです」
「私を置いていっちゃうんですか??」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返事はなかった。それは肯定っていうわけで・・・・・・。
「嫌だ!! 師範行っちゃやだ!!」
私は年甲斐もなく師範の腕にしがみついて、小さい子が駄々をこねるように“やだ、やだ”とばかり繰り返した。
「どうして!? どうしてこんないきなり!!?」
「いきなり決まったことなんです」
「師範がいなくなっちゃったら私どうすればいいんですか!?」
「牡丹さんには私以外にも仲間がいるでしょう?」
そうだよ・・・・・・私には仲間はいる。お引越しの時いっしょに旅路を歩いた楽しい姉妹。すっかり今ではお友達で、その姉妹もこの街にいる。いつでも頼れるし心強い仲間だと思う。でも・・・・・・。
「師範がいなくなっちゃったら・・・・・・寂しいもん・・・・・・寂しすぎるもん・・・・・・私師範が大好きなんだもん、一番大好きなんだもん・・・・・・」
いくら信頼できる仲間がたくさん側にいても、師範は師範で・・・・・・やっぱり一人しかいなくて、誰も代わりになんかなれなくて・・・・・・。
「いきなりで、本当にすみません・・・・・・では、私はそろそろ準備がありますから・・・・・・」
師範は私の頭をぽんぽんと優しく叩くと自分の小屋へと向かった。
私は・・・・・・誰かに泣きつきたかったけど・・・・・・そうもいかないから走って自分の家へ戻っていった。
時間が過ぎて、お昼になっても、夕方になっても、夜になっても、私はベッドの上で窓の外をみながら何もせずゴロンとしていた。師範がプレゼントしてくれたものとかを見ては涙が出てくる。泣くとなんだか更に悲しくなってくるような気もしたけど・・・・・・もう無意識だからどうしようもないっていうか・・・・・・。
「今日のことが全部夢だったらいいのに・・・・・・」
左手の甲を引っ掻いてみる。普通に痛みがはしった。
「嘘だよぅ・・・・・・師範はずっといっしょだと思ってたのに・・・・・・みんなでこの街で騒ぎ続けるんだと思ってたのに・・・・・・」
泣きつかれて私は眠った。
次の日の朝、人の気も知らないで爽やかに顔を出した朝日にアカンベーをする。コンコンとドアをノックする音がした。
「牡丹さん・・・・・・? 見送りいかないんですか??」
黒髪の男の子が遠慮がちに聞いてくる・・・・・・たしか政治家さんの息子さん・・・・・・。
「師範・・・・・・」
私は首を振って、元気を振り絞ってほうきを握り締めながら家を出た。街道へと急ぐ。
「師範!!」
街の門に飛び出して旅の荷物を持ったトレードマークの黒い服に駆け寄る。
「牡丹さん、見送りにきてくれたんですね・・・・・・」
「ね! 師範! 絶対いつか会えますよね?」
自信無さ気な声で尋ねる。否定されたらどうしよう・・・・・・。
「なに、会えるって♪」
私の肩を掴んでそう言ったのは街の騎士さんだった。明るい色の髪が師範とは対照的な印象の人だ。
「絆ってもんは切っても切れないもんなんだからさ、心配するなよ、な? そうだろ??」
私は騎士さんの台詞の後おそるおそる師範を見上げた。
「そうですね、いつの日かきっと・・・・・・」
師範は優しい笑顔でそう言った。私はたぶん笑顔になったことだろう・・・・・・涙つきだけどね。
「今生の別れじゃないですもん♪ 大丈夫ですよ♪」
バンダナを頭に巻いた元気の良さそうな女の子が私に微笑みかけながら言う。この子が師範の言ってた義賊の子かな??
「みなさん、ありがとうございます。牡丹さんのことお願いしますね」
街の人たちが頷く。
「おうよ! まかせときなって♪」
あの時の姉妹さんの妹さんが頼もしく返答する。
「牡丹さん、今までありがとうございました。ただの魔術師の私を師範として慕ってくださったこと、嬉しかったです」
師範の言葉に涙が頬を伝うのがわかった。
「師範はいつまでも私の師範ですから!! 私、ずっとずっと師範の弟子ですから!!」
声を張り上げてそう言う。涙が溢れてくるのはもう仕方ないのかな。
「ええ、一番弟子ですよ」
「会える時をずっと待ってますから!! いつの日かきっと会えるって信じて待ってますから!!」
泣きながら手を大きく振った。師範も笑顔で軽く手を振りかえしてくれた。師範が見えなくなるまで、肩が痛くなるほど、腕がちぎれるんじゃないかって思うほど手を振り続けた。
「牡丹ちゃん、大丈夫??」
姉妹のお姉さんが心配そうに私をのぞきこんでそう尋ねた。
「大丈夫です・・・・・・完全に大丈夫じゃないですけど大丈夫です・・・・・・」
若干言ってることが筋とおってない気がしたけど・・・・・・大丈夫。
「だっていつの日かきっと会えますから」
涙を袖で拭って私は師範が向かった方向を見つめた。
「いつの日かきっと・・・・・・会えるから、絶対、会えるから」
自分に言い聞かせるように何度も言った。
忘れないでください、私はずっとその日を待ってますから・・・・・・
いつの日かきっと会えることを待ち望んでいますから・・・・・・
いつの日か・・・・・・きっと・・・・・・
〜あとがき〜
何人かは『ああ、あの設定使ったのか』とわかるファンタジーの設定で書きました。
この物語の中の登場人物には主人公牡丹以外名前がありません(苦笑)
牡丹視点=私の想い反映 って感じで。
師範はもちろん師範ですよ(笑)
政治家の息子はしぐちゃんを、騎士はQさんを、姉妹は翡翠さんと彩名さんを、義賊の女の子は風ちゃんをイメージして書きました。
師範! 師範はずっと私の師範ですし、いつまでも大切な仲間です!
私の想いは牡丹といっしょです!
私もおそらく他の仲間たちも”いつの日かきっと会えること”を待っています☆