お題81「影」 鈴のシリーズ(?)の短文です。


 

 私は宇佐美鈴。15歳。中学3年生・・・。今私はいじめられてる・・・しかも仲良かった友達でさえ冷たくする・・・もうくだらないよ・・・小学生・・・3年生かあれも。いじめられたんだよねえ・・・東京生まれだからって。何か言えば殴られた。先生にさえ殴られた・・・問題教師で謹慎中だったらしいし・・・おかげで私は一時期口聞けなかった。今回だってそう、私が何したっていうのよ・・・何もしてない・・・ああ、私って・・・。

 

 そう思いながら眠りに就いた。ハッと目を覚ますと自分がいた。影のようにボーっと立っている私・・・いや、私とはちょっと違う。雰囲気が・・・。少しだけだけど私より大人びた顔をしてる。それに何か目が違う。優しそうだけど気の強そうな感じさえする・・・。

「鈴、何ふてくされてるの?」

私の影はそう言った・・・声は私より幼い気もするんだけど・・・。

「つまらないの、今の生活・・・いじめられっこなんです」

「そんなこともあったねえ」

この影、何かおかしい・・・しかも笑顔が怖い・・・優しそうに見えることは見える。私より上品そうにも見える・・・でも・・・この黒いオーラは・・・何?あったって・・・何で過去形なんだろう?この人・・・誰?

「仕方ないかあ、私嫌われる運命ですしねえ」

「そうなの、それは大変だね」

「・・・あんたムカつくんだけど?私じゃないの?何その余裕な態度は!!」

逆ギレだとは思うけど、ムカついて思わず起き上がって影をにらみ付けた。すると影は私の胸倉を笑顔を浮かべたままつかんだ。

「あまったれてんじゃないよ?あなたもしかして自分が不幸とか思ってるの?自分がかわいそうとか・・・」

「な、な、な・・・」

怖い・・・声も優しいし笑顔はひきつってない・・・すごく自然なんだけど・・・完全に怒ってるというか・・・。

「か!かわいそうって思って何が悪いのさ!私は何にもしてないのに!絶対私は不幸の星のもと生まれたんだよ!!」

私は叫んだ・・・すると影は力をさらに強めた・・・大した力じゃない・・・力があまりないのは私と変わらない・・・けど・・・。

「不幸?あなた自分の暮らしぶり見てるの?こんなにモノが揃って両親もいて、食べ物にも困ったことの無いあなたが不幸?世界でそんなの通用すると思ってるの!?」

影の声は・・・幼さをさらにましていた。たぶん怒ってるのだろうと思う・・・私と同じ。怒ると声が幼くなる・・・もとから幼い声だけど・・・。

「あ、あんた誰なのよ・・・!」

「私は宇佐美鈴。大学1年生よ」

影は表情を崩さずそう言った。大学1年・・・ということは未来の私・・・??

「私はたしかにあなたみたいに思ってた・・・ううん、あなただった。でもよく考えてみなさいよ。あなたは両親に愛されてる。可愛がってもらって・・・私立の女子校に通いたいと言えば快く受験させてもらって、こうやって通わせてもらって・・・高校もこのままあがるんでしょ?それで大学も普通に私立に通うの許可されてるでしょ?」

影は・・・未来の私はそう一気に言った。そう・・・私は小6の時、将来大学受験したいから6ヵ年一貫の私立の女子校に通いたいと言い出して受験させてもらった。うちの学校の学費はお嬢様校って言われてるだけあって馬鹿にならない。受験生の時には進学塾にも通わせて貰ったし、まるで当然のように・・・大学だって・・・きっと私が行きたいところに通わせてくれる・・・もとより父さんの所得はある方だ・・・お金持ちとは言わないけど裕福な家の子であることは間違いないんだろう。いじめられて落ち込んでいれば母さんも父さんも心配してくれる・・・おばあちゃんたちだっていつも気にかけてくれる・・・。お願いすれば食べ物も飲み物も出てくる・・・そんな暮らしをしてるし、そんな暮らししか想像できない。五体満足・・・生まれつき目が悪いっていうのはあるけどいたって健康だし。私は・・・。

「う・・・うう・・・わかってる・・・そんなに不幸じゃないかもしれない・・・でも私はやりきれないんだよ・・・!!」

「わかる。でもね、暗くばかり考えたってしょうがないんだよ。人間多種多様だからうまの合わない奴もいる。なかにはけなしてくるような馬鹿もいる。そんなのいちいち気にしないの・・・そいつらが陰口言ってるってこと周りの子にそれとなく教えてごらん?あっという間にそいつら嫌われるから。いい?人の悪口ばかりいう人は嫌われるの。辛いかもしれないけど耐えなさい。耐えることができたら・・・少しは大人になれるから」

未来の私は私の頭を優しく撫でた。

「それにしても・・・やっぱり短い髪は似合わないね」

おかっぱにした私の髪を梳きながら彼女はそう言った。私も・・・そう思う・・・よく見れば未来の私は長い髪をバレッタで少しとめるというヘアスタイルで・・・今の私より幾分か可愛くさえ見えた・・・ちょっと変えるだけで女ってものは変わるものだなとか変に感心してみた。

「じゃあね」

影は・・・消えた。気が付くと朝だった・・・。夢・・・だったのかな・・・。

 

「鈴ちゃんって大変だったんだね」

うちの大学の箏曲研究会の活動部屋・・・和室で昔の話をお互いにした。それなりに人間関係こじれたりもしてたみたいだけどいじめられたりしたのは私だけだったらしい。友達がそう言った。

「そうかな・・・でも私は恵まれてるよ」

みんながえ〜!?と言う。でもこれは本心からだ。だって私は今すっごく楽しい。好きなことだけやって・・・ちょっとは家事しないとなとか思うけど。結局私は私立の大学に通った。また進学塾にも通わせてもらって・・・狙い通り中堅の学校に入った。私は日本に健康な子供として生まれた。私を愛してくれる両親に育てられた。物に困ったことも無い。たしかによくいじめられたけど1人ぼっちになってしまったことは一度も無い。それを今はすごく恵まれてるって思う。私はなんて幸せなんだろうとさえ思う。苦しいこと、辛いことに耐えた結果なのかな・・・。私の考え方は、あの時の影といっしょになってた。

 

 私は部屋で片づけをした・・・引き出しを整理すると昔の日記があった・・・ちょうど中学3年生の・・・途中で終わってる日記。開けて見てみるとまあ何とも愚痴っぽい・・・。自分をさぞ不幸に書いていた・・・何ていう贅沢ものだ・・・。あ・・・。そうか・・・。

「これとしゃべってたらもしかして昔の私の夢に出たとか?」

私は怪しいながら一人日記を前にくすくす笑っていた。

 

昔の自分のように・・・自分が不幸だと思っている人に伝えたい・・・自分の生活において少しでも幸せを感じることってない?と・・・親は自分を大切にしてくれてませんか?気心の知れた友人はいませんか?生きていくに不足のない食べ物と水はありませんか?健康に暮らせていませんか?物に困ったことありますか?平和な世の中ではないですか?・・・よく考えてみてください・・・あなたはけっこう恵まれているんですよ?そう思って生活してみてください。そしたら少しは幸せな気分でやっていけますよ。私はそれでいつも元気にいつも幸せを感じて生きていけるようになったんですから・・・。

 

あの時見た、自分の影に改めて感謝した・・・。

 

おしまい


〜あとがき〜
また鈴を使って書きました。ほとんど自分の考え書きなぐっただけのような作品なのですが・・・。中学生時代の鈴は本当に未熟で駄目な意味で子供っぽいんですよね・・・大学生の鈴は雰囲気は幼いままなんですがある意味冷静でそれなりに大人になっています。声が幼くなっているのは・・・ふっきれたらそうなったんでしょうね・・・私がそうなったんですよ・・・箏の唄のテープ聞き比べたら昔の方が声まだ(泣)チャットでもみなさんに元気と言われている私ですがこの大学生の鈴のようにいつも自分は恵まれてるな〜幸せだな〜と思うようになって・・・そしたら何か元気な性格になったんですよね♪
みんなが幸せな点を見つけて毎日明るく元気になってくれるといいなと思います。