お題54枷  「アドベンチャーズ」のお話で書いてみました♪

過去は変えられない・・・

後悔しても仕方ない・・・

それはわかる・・・

けど過去は消せない・・・

忘れることなんかできないから後悔だってする・・・

黒い過去はいつまで私の枷となるのだろうか・・・

 

「フライレ〜なにこわい顔してるの〜?」

私の前に屈託の無い幼い魔法使いのマリモがいた。考え事をして気付かなかったか・・・我ながら不覚だ。過去の職業を廃業したからといって油断しすぎるのもはっきりいって大問題だからな・・・。

「怖い顔などしていない・・・」

「え〜?こわい顔だよ〜?フライレ美人なのにもったいないね〜」

「何言ってる!?美人なんかじゃない!!・・・ほら、他の奴らとでも遊んでこい」

マリモの言葉に焦ったような声を出してしまった。まったく・・・子供というのはよくわからん。マリモは首を傾げてわかった〜と言うと焚き火の方へ戻っていった。国王からのお達しである任務を遂行のため形成されたパーティーだがなんというお気楽さだ。焚き火で暖をとっているというよりはまるでキャンプファイヤーだ。フタバが箏を弾いてセザが篠笛を吹いて・・・盛り上がっている。第一フタバはなんで箏を選んだんだ?普通吟遊詩人は竪琴だろう・・・なんて疑問を投げかけてみる。タツヤとかいう忍の少年とイギスという剣士の青年が食べ物のことでまた争いを始めている・・・よく飽きないことだ。それをボーっと見ているエル。エルは国王の娘なのに何でまたこんな危険もともなう冒険なんかに出てくるんだ?というか親は止めないのか?仮にも王女だぞ?・・・全く、このパーティーはつっこみどころが多すぎる。盛大に溜め息を漏らしてしまう。

「景気悪そうだね」

後ろから声がかかる・・・また気配を察知できなかったとは・・・不覚にも程があるか。

「悪かったな」

「せっかく盛り上がってるんだから輪に入れば?」

「いい・・・そういうおまえはどうなんだ?」

「僕はうるさいのあまり好きじゃないからね」

・・・相変わらず可愛くないオーラを纏った奴だなとまた溜め息を漏らす。クラシス。13歳にして正神官になった天才児と誉れ高い少年だが、神官だというのにこの上なくひんまがった性格をしていると思う。いつも高圧的だし・・・よく神官がつとまるなと思いきや教会では営業スマイルふりまいている・・・こいつはセザと並ぶほど腹黒だろうな・・・。

「いつまでもさ、過去振り返るのやめたら?」

「!!?」

いきなり言われた言葉に驚く。腐っても神官・・・そういうのは見抜くタイプか・・・。

「過去を振り返ろうがどうしようが私の勝手だろう・・・」

「過去を振り返るのは悪いことじゃないけど?」

「・・・言っていることが矛盾していないか?」

「かもね。まあ僕が言いたいことは過去を後悔することばかりに振り返るのはやめたらってことだね、過去を糧にして生きていくっていうのがいいんじゃないの?」

言葉は横柄だが神官らしい内容の言葉を並べるクラシス。表情はいつもと変わらない・・・さも当たり前のように言っていた。

「元暗殺者の過去っていうのは・・・重いんだろうね」

「ああ・・・人を殺して生きていく職業だからな・・・」

何人殺したのだろう・・・依頼を受けては私からしたら何の恨みもない人間を今も手にしている銃で撃ち殺した。生きるために人を殺す・・・最悪な人間だった・・・私は。それが嫌になって廃業した・・・だが私を追っている暗殺者もいる。報復されるのもそんなに遠くないかもしれない・・・今も2人の気配を見過ごしたのだ。暗殺者に隙を一瞬でも見せればあの世逝きだろう・・・。

「罪悪感はかなり?」

「当たり前だな・・・人の一生を奪った罪だ。それも1人や2人どころじゃない。私は天寿をまっとうすべきではないだろう」

いつ死んだっておかしくない・・・それよか死んだ方がいいのではないかとさえ思う。

「そ、でも死んだらそれで終わりだよね」

「え?」

「死んで楽になるより少しでも償いをするべきだと思うね」

「償いなんてできるものか・・・」

「何人もの人を殺したんでしょ?だったらそれだけの人を助ければいい。世の中には何も悪いことすらしてないのに殺されたり死んでしまう人もいる。そういう人を守ればいい・・・もっとも人を殺した罪を浄化できることなんてないだろうけどね」

淡々とクラシスが言う。たしかに人を殺した罪は浄化などできない。何をしても死んだ者は戻ることは無い・・・。

「それは償いになるのか?」

「気持ちの問題ってやつかな?それに・・・」

「それに?」

「フライレは人が殺されるのが嫌なんでしょ?だったらそうさせないように戦うべきなんじゃない?」

クラシスを見る。その表情は生意気そうだったが穏やかに見えた。ああ、こいつは聖なるモノに仕えているのだなと思えた。

「生死をまつわるものに答えなんてない。僕が言えるのはあくまで個人的意見だから鵜呑みにすることはないけどね。懺悔がしたければ僕のとこきたらいいよ、これでも神官だからね」

かったるそうないつもの表情を浮かべながらクラシスは焚き火の方へ向かった。

「クラシス・・・ありがとう」

「べつに」

こちらを見ないでクラシスがそう言う。毎度ながら可愛くない奴だ・・・苦笑しながら私も焚き火の方へ向かった。いつのまにかタツヤとイギスの争いはタツヤとセザに変わっていたようだった。セザの銃が轟く・・・まったくなんていうエルフだ。同じ銃を扱う奴として呆れるしかない・・・が、このパーティーで最強なのはこいつだろう・・・いろいろな意味で。

「フタバ、私故郷曲聴きたいな・・・」

「了解です。王女もいっしょに歌いますか?」

「そうだね、みんなで歌おうよ!」

仲間で盛り上がる。まったく暢気なメンバーだ・・・。

私はこんなに穏やかな時を過ごして良いのだろうか・・・。

疑問に思いながらも楽しそうなメンバーに笑みがこぼれる。


過去は消せない・・・。

罪は消えない・・・。

だからそれを胸にしまって・・・決して罪を忘れないようにして・・・。

もう後悔しないように・・・罪のない者、まっとうに生きている者の命が奪われないように・・・。

私ができることをしよう・・・。

過去は未来のためにあるのだから・・・。

私はこの罪悪感という枷を糧に変えられるように・・・。

そういう風にこの先生きていけたらと思う・・・。

故郷曲に思いをのせて、私も仲間と共に口ずさんだ・・・。


〜あとがき〜
「アドベンチャーズ」使いました♪「蒼い世界のなかで」や「亡国の舞姫」に比べると能天気なファンタジーですがフライレさんはシリアス&重い担当です(何)フライレさん贔屓です♪強くてかっこいい女性万歳☆
は〜い箏弾けるキャラ健在です(笑)フタバ、重い箏をどこに行くにしても持っていくすごい子です(笑)私だったら無理(苦笑)すぐ腕おかしくなるし(情けないから)
セザの銃ぶっぱなしも健在ですね(笑)
クラシスは・・・ユウギリとマーラを足して2で割ったようなキャラに思えますね・・・特技は営業スマイル(笑)
私の小説は主人公がやや影薄い傾向がある気がします・・・「亡国の舞姫」の蓮華の君以外は出番とられがちですね、注意せねば!
シリアスなキャラの一人称はなかなか難しかったです♪私の小説は大体三人称なのでお題では一人称も使っていきたいなと思っています☆