お題33「剣」 高校時代に考えたファンタジー第二弾です(苦笑)

「大丈夫ですか?」

夜の薄気味悪い森の中、黒髪のいかにも真面目そうな新人騎士の青年は、魔物を倒し隠れるよう命じた少女に声をかけた。

「私は大丈夫です・・・カナタさんは?」

「私はなんてことありません。レンが無事ならそれでいいです」

カナタがそう笑顔で答えると、和服をまとった長い黒髪も鮮やかなおとなしそうな少女、蓮華は穏やかな笑顔を返した。

「早く森をぬけたいですね・・・いつ追っ手が来るともわからないですから」

「そうですね、レン、決して私の側から離れないでくださいね」

「はい・・・でもカナタさんが私のこと守る義務はありませんよ?私は東の国の者でカナタさんはウェルパ国の騎士さんなんですから・・・」

「女性を守るのは騎士として当然ですよ」

カナタは笑顔をくずすことなく、剣についた魔物の血を拭き取りながらそう言った。蓮華はその様子をボーっと眺めていた。

「どうかしましたか?」

「あ、いえ・・・剣の手入れ・・・いつも入念にしてるなあって思って・・・」

「それはそうですよ。私たち騎士にとって剣は大事なものですからね」

「大事なもの・・・ですか」

「ええ、剣に誓って私たちは騎士になります。もちろん武器が剣で無い者も騎士団にはいますが、全員誓いのために剣は持たされます。この剣は私の武器だけでなく誓いをたてた大事な剣なんです」

カナタは真剣な表情でそう言った。一方蓮華の方はやや哀しそうな表情をしていた。

「レン・・・?」

「私は剣が苦手で・・・お父様もお母様も剣で・・・」

「すみません」

「カナタさんが謝る必要はありません。私が武芸のひとつも身につけていなかったから両親を助けることができなかった・・・それだけです」

「剣が怖いからその腰にさげている刀も・・・使えないのですね・・・」

「でも、怖がっているだけでは前には進めませんよね・・・ウェルパについたら武芸の稽古をしたいと思います」

「ではその時は私がお教えしますよ」

「ええ、お願いします」

蓮華が元の優しい笑顔になりカナタはほっとした様子だった。

「今日この森をぬけるのは無理でしょうね・・・私が見張っていますからどうぞお休みください」

「え?でもカナタさん疲れているでしょう?」

「これくらい大丈夫ですよ。レンは心理的負担も今は重いでしょうし休んでください」

「・・・わかりました。お願いします」

蓮華はカナタから寝具を用意され、あたたかくして眠りについた。カナタはやはり疲れていたんだなと思い、クスッと笑みをこぼした。蓮華の左右・背後は森の木にまかせ、カナタは蓮華の前方に座り見張りの任をつとめた。

「我が剣よ、今また誓いを・・・」

カナタは小声でそうつぶやきながら剣を鞘から取り出した。

「我が剣に誓いレンを守る・・・」

カナタはいざ誓いの言葉を述べるとそういえば蓮華と会ってから本当に短い時間しかたっていないことに気付いた。直感的にカナタは蓮華を守ってやらねばならない気がしたのだ。

 

どうしてだろう?

 

女の子だから?

 

かよわそうな姿をしているから?

 

故郷が滅んでしまったから?

 

亡国のお姫様だから?

 

考えてもカナタにははっきりとした理由はみつからなかった。

「まあ、守るのに理由なんて別に必要ないですよね」

カナタは振り返って蓮華の寝顔を見てそう言った。

「願わくば我が剣が誰かを傷つける刃物でなく守るための道具であることを・・・」

カナタは剣を木々から少し漏れてきている月の光にかざして刃の部分を輝かせた。

「・・・おやすみなさい蓮華の君。私がこの剣でお守りしますから安心してくださいね」

 

月の光を浴びた剣は優しい光を反射していた・・・。

 

カナタの優しい心を反映するかのように・・・。


〜あとがき〜
高校時代に考えてたお話「亡国の舞姫」で書いてみました。このお話は「蒼い世界のなかで」より暗いかもしれません・・・何故って主人公が暗いんです!蓮華かカナタかちょっと微妙なんですが2人とも暗めなので(汗)でもってこの2人見目は大したこと無い設定のようです(苦笑)世の中美形だらけでたまるかよ!ってことでそういう設定にしたんでしょうね当時の私(笑)で、出ましたよ蓮華ちゃん箏弾けます(いい加減にしなさい)というか蓮華はタマと似てるんで私の女の子の理想像です♪このお話の段階だと守られ役に徹している蓮華ですがいずれ刀振り回す強いお姫様になるんで(何)このお話もシリーズ化で登場するかもしれません☆