お題87「日常的」 高校生時代に考えていたファンタジー小説の設定で短文書いてみました♪

 

 とある異世界の小さな王国、レイタスの城下町の近くにある小さな村。子供たちが鬼ごっこをし、大人たちが働きながらも笑顔で話す光景がなんとものどかな・・・光景・・・なのだが。

「おい!おまえ俺のプリンかえせよ!」

「・・・嫌だ」

「嫌だじゃねえ!おい!えっちゃんも何か言ってやってくれよ!」

「えっちゃん言うな!愛称はエルだけにしてよ!」

宿屋のテーブルを囲んで3人が食事をとる。プリンを返せと喚いているのは黒髪に黒い瞳のいかにもやんちゃそうな少年タツヤ。どうやら忍者の血をひいているようなのだがそんな様子は微塵も感じられない。タツヤに絡まれて(?)いるのは少し長めの金髪に蒼い瞳の見目はいいが何を考えているのかよくわからない青年イギス。そしてえっちゃんと言われ怒っているのが王族なのに何故か外によく出ている金の髪に碧の瞳の少女エルことエメラルド王女だった。

「いちいちガタガタうるさいな・・・大人になれんぞ」

「おまえな!年下からデザートとって偉そうにしてんじゃねえ!」

「・・・隙があったもので」

「だあ!その態度が気にいらねえんだよ!!」

2人が(というよりタツヤ)騒いでいるとパーンと鋭い音が響いた。

「うるさいですよ。他のお客様の迷惑になります」

そう言って笑顔で銃を下げたのは旅に同行している紫の長い髪が印象的なエルフの青年セザだった。

「ちょっとセザ!室内で銃ぶっぱなさないでよ!!」

「いえ、空砲ですから」

エルのもっともな言い分に爽やかな笑顔で返すセザ。人から見てもまさに美形といった風貌のセザは温厚で思慮深い大人の男性なのだが・・・かなり腹黒い。しかも銃をいきなりぶっぱなすことがあるのが困りものだ。常識は一応あるのだが・・・。

「このエセエルフ・・・」

「ええ、はぐれエルフですから」

「自分で言うな!!」

今度はタツヤとセザの言い争いになった。まあタツヤがセザに勝つことは1万分の1の可能性もないのだが・・・。その間にイギスはタツヤのデザートもすっかりたいらげてしまった。そしてまたセザの銃が轟いた。その様子を見てエルは盛大に溜め息をついた。しかもこんな様子にも村の人々はいっこうに驚かないようだった・・・そう、つまりこれが彼らの日常なのである。

「ああ・・・暇だね・・・」

エルはそう言いながらイスの背に全体重を預けるようにした。

「暇は嫌いか?」

「そうだね・・・つまらなくないこういうああ、日常的だなって思うこと・・・」

「そうかな?」

「イギスはそうは思わないの?」

「たしかにつまらないって思うのはあまり好きではないがこういう日常的と思うことは嫌いじゃない」

エルはふ〜んと言った。イギスの嫌いではないということはほぼ好きという意味だ。

「何でそう思うの?」

「え・・・いや、その何ていえばよいのかな・・・」

「いざ日常から脱してみてしまうとその日常が恋しくなるものですよエル王女」

タツヤとの口論にも圧勝してきたセザが笑顔でイギスの代弁をした。

「そう?」

「ええ、今ここは平和で穏やかな時間が流れています。のんびりして・・・それはとてもいい日常をおくれる環境だと思いませんか?」

「そうかな〜、私は冒険したりのほうがいいけどな」

「エル王女はまだ若いですからね・・・いつかそう思える時がきますよ」

セザの言葉にエルは完全に納得した、という表情は見せなかった。それでもセザはいつか必ずそう思える日がくるだろうなと確信しているように微笑んだ。

「老け込んでるな、セザ」

いつのまに復活したのかタツヤがセザの背後からそう言った。

「そうですか?あなたみたいにいつまでも幼いよりはよっぽどいいですよ」

「何だと〜!!」

「私はエルフですからあなたより全然長生きできますしね、年をとるのは遅いですし♪最終的にはあなたの方が先に老けますよ」

「このクソエルフ〜!!」

「うるさいですね?ぶっぱなしますよ?」

タツヤの額に笑顔で銃をつきつけながらセザが穏やかにそう言うとタツヤは言い返すこともなく真っ青になっていた。

「いいとは思わないか?」

「え?」

「こういう・・・日常」

イギスの言葉にエルは視線をあげて少し考えてみた。

「・・・いいかもね・・・みんな楽しそうだし」

「そうか」

「うん」

エルはそう笑顔で言った。

 

 会計をすませて城下町へと帰る。街道にも魔物は少なく、エルの中でのんびりと1日がすぎていった。レイタスの丘に沈む綺麗な夕日をぼんやりと眺めながらエルは平和で穏やかな時間を感じ取っていた。

「ほんと・・・穏やかな日常だよね・・・」

「いいことです」

「平和が一番だろ・・・」

「これでセザが性格いいとなおいいんだけど〜」

「何か言いました?」

「何でもないっす!!」

そうして4人の平和な日常が過ぎていった・・・。

 

おしまい


〜あとがき〜
高校時代に考えてたファンタジー小説「Adventurers」を使って書いてみました。これも主な登場人物多いんですよね・・・でも10人でした。(蒼い世界のなかではとくに多い方)蒼い世界のなかでと比べるとかなり暢気な内容です。そんなに暗い話ではなかったと思います・・・若干暗いですけどね♪ちなみに登場人物中のセザはまたまたですが篠笛できます♪私の小説では美形は篠笛できるのです!!(どういう見解だ)箏弾ける女の子キャラも実はいるのです☆この小説での1番の私的贔屓キャラ今回は出しませんでしたが・・・企画のお題とかでちょこちょこ出てくるかとおもいます♪