お題58「おはよう」
オリジナルの「蒼い世界のなかで」以外の短文です。
「おはよう!」
「・・・おはよ」
キミはいつも無愛想だねえ〜そんなんだから男の子みたいって言われるんだよ?まあ中性的な顔立ちっていうのもあるんだろうけどさ。キミは私にとっては一番大好きな友達。親友じゃないと思うけど・・・だってキミは私のことそんなに大事な友達とか・・・思ってないもんね。小学生の時進学塾でいっしょのクラスになった。キミはいつも成績上の方に名前があって、前の方の席で物静かに授業受けてたな〜とかそんな印象しかなかったけど・・・あと綺麗な子だな〜って。それがたまたま同じ中学に進学した。一応有名お嬢様校って言われてるけど物凄く難しい中学ってわけじゃなかったから正直キミがいてびっくりした。で、しかも同じクラスでびっくりしたよ。それでなんとなくいっしょにいるようになって友達になった。キミは大人びてるようで子供っぽいところあるし黙って立ってれば美人なのに口が悪くって無愛想で・・・知らない子からすれば近寄りがたい印象だよ?もったいない。でも・・・本当は優しいんだよね・・・キミは。
「最初は、荒井さん、安藤さん、池上さん、宇佐美さん、遠藤さん」
先生の声がかかった。ダンスのテストだ。嫌だなあ私は出席番号が4番だからいっつもこういうの最初。時々は後ろからやってくんないかなあ・・・。体育館シューズをきっちり穿いてることを確認して指定された位置に立った。
「くすくす・・・だっさ〜い」
クラスの子の揶揄が聞こえる。当然言われてるのは私・・・あの人・・・竹上さんだっけな・・・何かしたわけじゃないけどいっつも私のことああ言って馬鹿にする。まあ・・・たしかにダサいけどさ・・・私はまんまるの体型に長い癖のない髪を2つの三つ編みに結ってめがねかけたいわゆる絵にかいたような地味で真面目ちゃんな生徒。お世辞にも可愛い顔もしてない。ここは女子校のせいかみんな嫌な面もけっこう全開だし。ムカつくけど今テストだし、集中して踊る。隣の子がダンス部の子だからぶかっこうだろうなあ・・・。笑われるのはしょうがないけど(ダンス下手だし)ださいとか気持ち悪いとか言われる筋合いはないんだけど・・・ああ!腹立つ!!
「竹上さん!」
先生が竹上さんを呼び出して何やらお小言を言っているようだった。まあそりゃそうだろうね、あんなけはっきり言っちゃえば先生にも聞こえてただろうし・・・私は真面目ちゃんだから先生たちには評判がいいみたい。べつに優等生じゃないんだけどさ。せいぜい中の上。
「なんかあったの?」
私はキミに何もなかったように言う。
「気にすんな・・・あんな馬鹿」
キミは愛想悪く言う。でも慰めてくれたんだよね。ありがとう。
放課後。キミを含めた仲のいい友達たちと教室で談笑。いつものこと。
「っと、ごめんなさい」
誰かがぶつかってきた。私は癖だけど・・・とりあえず謝った。
「宇佐美さん!こっちが楽しくおしゃべりしてるのに邪魔しないでくださいます!?」
竹上さんだった・・・正直ウザイ・・・。ぶつっかってきたのはあなたでしょうが・・・。竹上さんの友達たちがニヤニヤしてこっちを見てる。怒られたのは竹上さんだけだったけどこの人たちも同じだ。
「キンキンうるせえよ性格ブス」
私はびっくりして振り返った。
「や、ヤマ!」
キミがいきなり暴言吐くこと無いのに・・・。竹上さんは案の定かなり怒った表情になった。はたから見て竹上さんは可愛いからブスなんて言われ慣れてないんだろうな・・・私は慣れっこだけど。
「だ、誰が・・・!」
「わかんないの?あんた馬鹿?いっつもいっつもキンキンした声でわめいてさ、情けなくない?しっかもそんなに鈴にばっかりあたってさ!ああ、性格だけでなくて顔もブスになってきたみたいだねぇ」
ヤマ言い過ぎ・・・口悪いからなあ・・・しかも美人なだけあってすっごく嫌味だ・・・。
「あんた結構嫌われてるよ?まあ、人の陰口言う奴なんてその程度の顔じゃ好かれないんじゃない?ご愁傷様」
「ヤマ・・・あの・・・」
「帰ろ、みんな。馬鹿がうつる」
ヤマに同意してみんなと私はカバンを持って教室を出た。後ろで山寺さん!とキンキンした声で叫んでる竹上さんはほっといて・・・廊下を歩き続けた。
「ヤマ・・・後・・・知らないよ?」
「だって本当にウザイもんあいつ。ブスをブスって言って・・・なんか間違った?」
「山寺さん痛快―笑っちゃった」
「平気だよ宇佐美さん、あの子今クラスのほとんどの子に嫌われてるし。まあ顔だけは少し可愛いけどほんとご愁傷様だし」
他の子も・・・いい度胸してる・・・私は気が弱すぎるだけなんだろうか・・・。
「鈴さ」
「は、はい!?」
「あんたもうちょっと自信持ったら?あんたのこと可愛いって言う子結構いるのに」
「へ?」
この顔で?お世辞にもほどがあるんじゃ・・・。
「鈴いっつもにこにこしてるだろ?顔もまるっこいから幼く見えるし、雰囲気的に可愛いってよく言われてるよ」
なんか・・・それ見た目自体は可愛くないってことね。まあ否定はしませんけど。
「あんたのそういうとこ嫌いじゃないけど。あんまり気弱だと見てていらいらするからさ」
それは・・・こわい。うん、少しずつ直そうかな・・・。
そうしてまたいつものくだらないような雑談をしながら家に帰った。
「おはよう!ヤマ!」
「・・・おはよ」
そして毎日が過ぎていく。いつも『おはよう』と元気良く笑顔で挨拶する。キミは眠そうにそして面倒くさそうに返す。低血圧だからとか言ってたけど・・・私も低血圧だよ?
しばらくして2年生になってクラスはキミと別々。いつものメンバーとも別れた。しかも運悪く竹上さんとはいっしょになった・・・。私は1年生のころでは考えられないけど・・・学級委員をやってみた。だんだん・・・思ったことを口に出す性格になって・・・段々周りの子に頼られるようにもなったり・・・成績は英語以外はうんと良くなった。先生からの評判は1年生のころよりよくなったみたい。竹上さんもあんまり何か言ってこなくなった。3年生になっていじめられたし、前のメンバーとも仲悪くなって・・・キミともあまりしゃべらなくなったけど、キミは大事な友達だって思ってるから。高校生になってからは別の友達と行動するようになったけど・・・。
「おはよう!ヤマ!!」
「・・・お、おはよ」
クラスがいっしょだったし、挨拶はいつもした。それだけの会話ってこともあったけど。進路は別々だった。私は、今は大学生。キミは専門学校生。私はみんなに勝気な性格っていう認識されてるみたい。でもいつもにこにこはしてる。外見は相変わらず可愛いとは思わないけどさ、でも気弱な性格はどっかとんでっちゃったみたい。キミのせいだからね、なんて。でも困ったことに・・・外見の印象と中身が合わなくなっちゃったんだよね。ま、楽しく生活できるようになったし、いっか。
「おはよう・・・ヤマ」
何となくキミの名を呼んで挨拶した。ここにはいないけど。
「さ、今日も行きますか!」
私は元気良くサークル活動のため家を出た。またいつかキミとおしゃべりできたらいいな。今の性格に驚くかもしれないけど。
おしまい
〜あとがき〜
いつもと違う種類の文章で書いてみました。「蒼い世界のなかで」以外はこれが初お目見えです・・・(緊張)何となく気付くかと思うんですがこの主人公”宇佐美鈴”のモデルは私です(汗)”ヤマ”(ちなみに設定ではフルネーム山寺灯)も本当にいた友人がモデルです。ダンスのところとかは実話だったり(汗)鈴を書いてみて自分の変化に客観的に驚きました(今更?)ということは鈴のサークルは箏曲研究会ですね(笑)性格が今みたいのに変化した原因をモデルの友人がつくったのはたしかです(笑)もしかしたらあのまま気弱だったかもしれないと思うとこわいです。このサイトも無かったでしょうね〜(しみじみ)
企画での私の初完成品はこれです。他にもいろんなタイプのお話書ければと思います。時々、鈴や灯も出てくるかもしれません♪それでは100、がんばっていきましょう!