13・正義
何が正義だ。
少女は、正義を信じていない。
漆黒の髪を腰辺りまで伸ばした、同じ色の瞳の少女。
髪や眼と同じく真っ黒なドレスを身に纏い、その華奢な身体とは何とも不釣り合いな大鎌を片手で持っていた。
月の光が反射して、鎌が妖しく光る。
その姿は―――死神。
まるで死神のようだった。眼に光はない。
地に足を着けず、ゆっくりと浮遊する。
あぁ、なんて愚かなんだろう。
この世には、正義なんて無いのに。
正義と偽って、その後片付けをしてあげている自分たちを死神とか悪魔とか―――何様のつもりだろうか。
彼女は終わることなく彷徨い続ける。
成仏されない魂が有れば、成仏させ。
手が付けられなくなった魂達は浄化――、つまり、全てを消す。
元々、罪のない人間を殺す奴が居なければこんな事しなくて済むのに。
彼奴らは、自分たちを正義と偽る。
その考えが理解できない。
だったら、罪のない者達は自分たちで何とかしろ。
漆黒の少女は、光の宿っていない瞳に微かに怒りの色を交えた。
どちらが正しいとは言わない。
どちらが悪だとも言えない。
どちらが正義だとも言えない。
少女は、怒りと悲しみに暮れている。
それは、とても悲しいことで。
まだ何も知らないうちに亡くなってしまった少女。
――――成仏出来なかった魂。
彼女こそ、必要だったのに。
それを分かっていない。
少女は狩り続ける。
自分の二の舞にさせたくない魂を、最も良い方向へ導く。
正義なんて信じない。
悲しい少女は、永久に彷徨い続ける――――