67:たった1人の親友

 

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 あたしの友人の、大切な人が死んだ。
 大切なっていっても、恋人とかそう言う関係じゃないって友人は言ってた。ただ、ずっと取っておきたい宝物とか、切ないくらいに美しい記憶とか、言葉では言い表せない大切な人なんだって。


  どうして死んだの?
 そう聞いたら、あたしの友人涙を溜めたまま、溢れるままに、うつむいたの。だから思わず言っちゃった。ごめんって。
 何で謝ったのか、今でもわかんない。あたしが悪かったわけじゃない。
 大切な人が何で死んだのか、今でも真実はわかってない。友人は真実を私に教えてくれない。
 聞き出そうとしたあたしが悪いんじゃないと思う。答えなかった友人が悪いんじゃないと思う。死んじゃった大切な人が悪いんじゃないと思う。
 きっと、どっかにいるはずの神様が悪いんだよ。
 あたしはいつもそうやって、見知らぬ神様に責任を押し付ける。いつか神様はその責任を背負ったまま、あたしのとこに押しかけるかもしれない。どうしてくれるんだって。たくさん押し付けちゃったから。でもそんなの未来のこと。
 とりあえずは今が最重要。
 だから、泣いてる友人が最重要だった。
 とりあえずあたし、ポケットからくしゃくしゃになったハンカチを取り出した。ドラマとか、マンガとかにありがちなシチュエーション。でもあんま、あたしがやってもさまになんない。あんまさまになろうともしない、思わない思いたくない。
 あたしの友人、それを受け取って涙を拭いて、ちょっといやな顔した。
  なに?
 聞いてみたら。
  異臭がする。
  このやろぅ、いい度胸してんなっ!
 あたし笑いながら友人に攻撃を仕掛ける。流石になれたもんで友人はひらりとかわすけど。まだまだ甘いなって、そうあたし言いながら最近編み出した必殺技を繰り出す。
 友人、上手く腹に入ったみたいで抱えながら苦しそうにしてた。泣き笑い状態。
 あたしもなんだか泣き笑い。
  二人して、へんなの。
 友人がそう言う。もう涙でびちょびちょ。きっとあたしもああなってんだろうな。
 あたしの友人の、大切な人が死んだ。
 大切なっていっても、恋人とかそう言う関係じゃないって友人は言ってた。ただ、ずっと取っておきたい宝物とか、切ないくらいに美しい記憶とか、言葉では言い表せない大切な人なんだって。
 なんだか格好いいよね。
 少しずつあたしたち、大人になるじゃん? 大人になったら、もっともっと大人になるじゃん。いいでしょ、それで。
 ずっと夢みてるし、生きてる限り。でもそんなの未来のこと。
 とりあえずは今が最重要。
 泣き笑いの友人と一緒に、少しずつ大人になってくんだよ、あたしたち。 あたしたち、いつまでもずっとこのままでいられるわけじゃない。大人でもない、子供でもない時期なんてほんのわずか。すぐあたし達は大人になんなきゃいけない。
 人生経験重ねて大人になるでしょ。
 あたし、多分これからずっと友人と一緒に経験つむんだな。どんなに離れてても、遠くに行ってても。
 だって、こいつがあたしの親友だから。多分。
 だから、多分、こうやってあたしたち、大人になってく。




 あたしの、友人の大切な人が死んだ。
 大切なっていっても、恋人とかそう言う関係じゃないって友人は言ってた。ただ、ずっと取っておきたい宝物とか、切ないくらいに美しい記憶とか、言葉では言い表せない大切な人なんだって。
 ああ、何か切ないね。