ラト様が「蒼い世界のなかで」の話で書いてくださった作品です♪

勝負

 

 

 ある日の船上生活の中

 四人の男女がお茶をしていた。

 丸い机を四人で囲んで座っている。

 その机の上にはコーヒーや紅茶とクッキーが所狭しに置かれていた。

「たまにはこういう風にのんびりするのも良いですね。ね、ユウギリ殿?」

 シオンがユウギリに問いかける

「え? 何で僕にふるんだよ。でも、そうだね。この頃戦いばっかしだったし……

「そうだ! 何でシオンはいつもユウギリにばっかりなんだよ!」

 ハヤトがここぞとばかりにシオンを問い詰める。

「愛がゆえです」

 それをさらりと返すシオン。

「うっ……

 その答えにハヤトのほうがつまる。

「このバカ! 何でお前はいつもそういう恥ずかしいことをさらりと言うんだ!」

 ユウギリが真っ赤な顔をして反論する。

「でも、そういうこと言われるのって良いですよね」

 そんな中でアルトが場違いなほど穏やかに言った。

 三人の視線がアルトに集まる。

「え、何ですか?」

 アルトはその三人の行動に驚く。

「ユキ王子のこと……ですか?」

 シオンがアルトに優しく尋ねる。

「だからお前は何でそうデリカシーの無い聞き方を……

「あ、良いんです、ユウギリさん。本当の事ですから……もっとシオンさんみたいに積極的にいかなきゃダメなんですね」

「それは違う! シオンを真似しちゃダメだ!」

 ハヤトが慌ててアルトの考えを否定する。

「そうだよ! こんなバカなことしちゃダメだよ!」

 ユウギリもそれに続いて思い切り否定する。

「ハヤトはともかく、ユウギリ殿まで……

 それには少し落ち込むシオン。

「あ、そういえばユウギリさんに聞きたいことあったんですけど良いですか?」

 アルトが思いついたように突然ユウギリに問いかけた。

「え? 僕に答えられることなら良いよ」

「ユウギリさんの恋人はハヤトさんとシオンさんとどっちなんですか?」

 少々顔を赤らめながら聞くアルト。

「え? 僕に恋人なんて……

 こちらは顔を真っ赤にして答えるユウギリだったが……

「俺です」

 それを遮り、即答でシオンが答えた。

「何でお前なんだよ!」

 今度はハヤトが即座に反論する。

「おや、違うのですか?」

「当たり前だろ!」

「ハヤトがムキになっても仕方が無いでしょう。ユウギリ殿に聞いてみたらいかがですか?」

 ハヤトとは対照的に冷静に対応するシオン。

 その態度には余裕すらうかがえる。

「おお! そうだ! ユウギリ、どうなんだ?」

「そんなわけないだろ!」

 ユウギリが力いっぱい否定する。

「どうだ、シオン! ユウギリは否定してるぞ!」

「照れてるだけですよ」

 あくまでもシオンは余裕の態度を崩さなかった。

 いつもならここで勝負がつくとこだが……今日は違った。

「シオン……今日という今日はその態度許さねぇ! 勝負だ!」

 ハヤトがシオンに挑戦状をたたきつけた。

 そのハヤトの行動に他の三人は驚きを隠せなかった。

「ハ、ハヤトさん、何もそこまで……

 アルトが慌ててハヤトをなだめようとするが

「良いですよ」

 シオンはあっさりと了承する。

「え? シオンさんまで

「よし! そうと決まれば甲板で勝負だ!」

 ハヤトはいち早く部屋を出た。

「では、アルト殿に立会人をお願いしますね」

 さらにシオンが外に出る。

「シ、シオンさん!」

「シオン!」

 アルトとユウギリが呼び止めるが効果は無かった。

「ユウギリさん……私のせいで

 アルトはもう泣きそうだった。

「いや、アルトのせいじゃないよ。あのバカな二人がいけないんだ! 良いよ、もうやらせとこうよ」

「でも……

「怪我したら自業自得! ここには回復魔法を使える人たちが沢山いるから大丈夫だと……思う」

 ユウギリが部屋を出る。

「あ、ユウギリさん。待ってください」

 アルトもユウギリを追いかけて部屋を出た。

 

 アルトとユウギリが甲板に着くと、二人は静かに対峙していた。

 ちょうど良い事に甲板にはこの四人以外に誰も居なかった。

 風が強く、雲行きが怪しい。

 ハヤトの手には片手剣、ライトソードが

 シオンの手にはナイフ、守天姫が

 それぞれ握られている。

 二人は真剣だった。

「それではこれに勝った方がユウギリ殿の恋人、ということで良いですか?」

 シオンが穏やかなハヤトに尋ねる。

「ああ。そうだ」

 ハヤトが真剣な口調でそれに答えた。

「僕の気持ちは……どうなんだよ」

 ユウギリが不満げにつぶやく。

「それではアルト殿、開始の合図をお願いします」

「あ、はい。でも本当に良いんですか?」

 アルトはまだこの戦いをためらってるようだ。

「良いんだ。今日こそあいつの口をへし折ってやる」

 ハヤトが意気揚々に言う。

「それを言うなら口では無く鼻です」

 シオンがいつもの態度で冷ややかに突っ込む。

「なんだよ! 口でも鼻でもどっちでも良いだろ!」

 さらに二人の熱が上がる。

 それを見たアルトは諦めた。

「それでは……いきます。試合……開始!」

 そのアルトの合図と共にハヤトが動いた。

 剣を振り回しながらシオンに突撃をかける。

 そしてシオン目がけて振り下ろす一撃!

 シオンはよける。

 さらにハヤトの攻撃が続く。

 今度はよけきれずに仕方なくシオンはナイフで受け止めるがその衝撃に耐え切れず後ろに飛んだ。

 やはり剣をナイフで受け止めるのは無理があるようだ。

 しかし、間合いが開いたのを幸いにシオンはナイフを投げる。

 ハヤトはその不意の攻撃に慌てて剣で防御する。

 剣で防がれたナイフはシオンの手元に戻る。

 まさに真剣勝負だった。

 その勝負を見てるアルトとユウギリの方が緊張していた。

 アルトは双剣、天狼牙双を手に持って構えている。

 危ないと思ったら二人の間に割って入るためだ。

 どちらかの攻撃が一撃でも当たれば……運がよくて大怪我だろう。

 二人の攻防は続く。

 どちらかというとシオンの方が不利みたいだ。

 さすがに接近戦でハヤト相手では分が悪い。

 さらに何度か剣を交えた後、ハヤトは何を思ったか自分から間合いをはずした。

 シオンは当然のごとくナイフを投げる。

 ハヤトには策があった。

 シオンが投げたナイフをハヤトは思い切り剣で打ち飛ばした。

 飛ばされたナイフは当然のことながら遠くの方に飛んでいく。

 いくらナイフが魔法で戻るといってもこれで数秒かかるはずだ。

 そう。ハヤトはこの空白の数秒間を狙っていた。

 シオンは今、丸腰だ。

 ハヤトは素早く間合いを詰めて、シオンに切りかかる。

 その瞬間、アルトも動き出した。

 しかし、いくらスピードに優れているといっても間に合わない。

 ハヤトの剣がシオンを捉えるその瞬間!

「シオン――!」

 ユウギリの悲痛な叫び声が響き渡る。

 ハヤトの動きが止まり、ユウギリのほうを向く。

 シオンはその隙を見逃さなかった。

 無理な体勢ではあったが、ハヤトの腕に蹴りを入れる。

 ハヤトは油断したせいか、不覚にもその衝撃で剣を落としてしまう。

 シオンのナイフが戻ってくる。

 ハヤトが剣を急いで拾う。

 その結果……シオンのナイフがハヤトの首筋数ミリのところで止まる。

「勝負……ありましたね」

 シオンがいつもの穏やかな口調で話す。

……

 首筋にナイフを当てられてるせいか、ハヤトは答えることが出来なかった。

「アルト殿、宣告をお願いします」

 二人の近くまで寄っていたアルトにシオンは優しく話しかける。

「え? あ、はい。勝者、シオンさんです」

 アルトは言われたとおりに宣告はしたものの動悸が止まらない。

 シオンがナイフをしまう。

 それによってハヤトが解放された。

 ハヤトは糸の切れた人形にみたいに座り込んだ。

 シオンはユウギリのもとに歩み寄る。

「ユウギリ殿、応援、嬉しかったですよ」

 シオンが笑顔でユウギリに話しかける。

「あ、あれは無我夢中で……

 ユウギリが真っ赤になる。

「それでは、部屋に帰りましょうか」

 ユウギリは何も答えなかったものの先に部屋に向かって歩き出した。

 シオンはそれについて行き、二人は甲板から立ち去る。

 それに対してハヤトは呆然としながらつぶやく。

「負けた。あんな優男に。海賊が……あんな奴に」

 そしてふらふらしながら自分の部屋に戻っていった。

 残ったのはアルト、ただ一人。

 こちらも双剣を持って呆然と佇んでる。

 と、突然座り込んだ。

「な、何も無くて……良かった本当に……良かった」

 心底安心したようにつぶやいた。

 空を見るといつの間にか雲一つ無い快晴になっていた。

 

おわり