ラト様作の小説です☆
太陽
ある高校のある教室。
そして今は放課後。
二人の生徒がイスに座って机をはさんで向き合っている。
そして教室には二人の他には誰も居なかった。
一人は規則上等とも言わんばかりの金髪で制服を着崩した男の子。
もう一人はそれとは対照的に真っ黒な髪で制服をぴしっと着ている男の子だった。
金髪の男の子が黒髪の男の子に問いかける。
「なあ、お前って頭良いよな?」
黒髪の男の子は不審そうに答える。
「ああ。お前よりはな。いきなり何だ?」
「聞きたいことがあるんだ」
「何だ?」
ぶっきらぼうな口調で返事を返す。
「『キミは僕の太陽だ』ってセリフがあるけど、あれなんで太陽なんだ?」
「はあ?」
いきなりの質問に黒髪の男の子は対応しきれないようだ。
「いやな、あれ太陽じゃなくて良いんじゃ無いか?」
それをよそに金髪の男の子は話を続ける。
「それじゃ、例えば何に変えるんだ?」
黒髪の男の子は興味なさげに聞く。
「例えば…『キミは僕の木星だ』とか」
「それじゃ、言われても嬉しくないだろ」
「だったら『キミは僕の火星だ』は?」
「たこをイメージしちゃうだろ」
「なら『キミは僕の金星だ』はどうだ?」
「…それは発音がやばい」
「『キミは僕の冥王星だ』」
「マニアックすぎる。」
「じゃー何が良いんだよ!」
否定的な友人に怒り出す金髪の男の子。
「何で怒り出すんだよ」
黒髪の男の子はため息をつきながらぼやいた。
「お前が全部否定するからだろ!」
「分かった。分かった。それじゃ、今度は逆に何で太陽じゃないとダメなのか考えてみれば良い」
「…なるほど。そうか」
やれやれと言った表情で黒髪の男の子は友人を見つめる。
「で、太陽って何で褒め言葉なんだ?」
真面目な顔して金髪の男の子は聞いた。
「それはお前が自分で考えろ」
「次はお前の番だろ。それにお前の方が頭良いんだから簡単に分かるだろ?」
「次って何だよ…。まあ、良い。一般的には照らしてくれるからってのが常識だと思うが」
「ふーん。月を照らすみたいにか?」
黒髪の男の子はうなづく。
「でもよ、太陽って明るすぎないか?」
「はあ?」
予想もしなかった返答に黒髪の男の子はまともに答えられなかった。
「太陽って双眼鏡とかで見ちゃダメなんだろ?だったら少しまぶしすぎないか?」
「た、確かに」
「だったら違う理由じゃね?」
その言い分に丸め込まれてしまう黒髪の男の子。
「そうだな。だったら何だ?」
「俺が思うに太陽が出てると暖かいからじゃないか?」
金髪の男の子がさも得意そうに言う。
「それにしては少し熱すぎないか?」
「…確かに。なら包み込んでくれるくらい大きいからか?」
「太陽より大きい天体なんて沢山あるぞ?」
「きっとそれがちょうど良い大きさなんだよ」
今度こそと思っているのか、金髪の男の子はまた得意そうに話した。
「でもさ、それって一歩間違えると悪口になるぞ?」
「え?何で?」
「キミは太陽のように大きいって意味になるだろ」
「…それは悪口だな。」
「なら、太陽は中心だからはどうだ?」
黒髪の男の子が思いついたように話す。
「中心?なんの?」
金髪の男の子は不思議そうに聞いた。
「太陽系の中心に決まってるだろ。地球やらなにやらは太陽を中心に公転してるんだ」
「中心か。ってことはキミは僕の中心になるのか」
「ああ。恋ってものはそういうものだろ」
「でもよ、太陽系って銀河のうちの一つだろ?」
「ああ。そうだが。それがどうした?」
黒髪の男の子はその友人の質問の真意が分からなかった。
「ってことは銀河はいっぱいあるんだろ。なら中心だって銀河の数だけある。違うか?」
「そうだが。だから何だ?」
「それじゃ太陽は中心の一つってことになっちまうぞ?」
「なるほど。浮気性の言葉だと言いたいわけだな?」
「ああ。キミは中心の一つだって言われたら相手はきっと怒るぜ」
金髪の男の子は苦笑をもらしながら話す。
「それじゃ、結局何なんだ?」
黒髪の男の子がしびれを切らしたように友人に聞いた。
「さあ」
金髪の男の子は両手をひろげてジェスチャーをする。
「…そろそろ帰るか」
黒髪の男の子はイスから立ち上がる。
ふと窓を見れば、外はもう真っ暗だった。
「暗いな。太陽が無いって事だよな」
金髪の男の子がぼそっとつぶやく。
黒髪の男の子は面倒くさそうに答える。
「別に太陽がなくなってるわけじゃない。地球の裏側にいっただけだ」
「それじゃ、太陽が無くなったらどうなるんだ?」
「そんなの決まってるだろ。太陽が無くなったら人間は絶滅だ」
「ってことはやっぱり無いと困るんだな」
「無いと困るどころじゃない。無くてはならぬ存在だ・・・うん?」
黒髪の男の子は自分の言葉に首をひねった。
金髪の男の子も同じように今の言葉でくびをひねる。
そして数秒の沈黙の後。
「それだ!」
二人は声をそろえた。
終わり